アイヌ語教室にカメラを寄付しました

北海道の平取町二風谷は、私が2008年から通っているアイヌ民族が人口の 約8割を占める街です。アイヌ語は、極めて消滅の危機にあるとユネスコが認定しており、その保存と継承が急務とされています。

2015年5月に、平取町を再訪した時、「ユカと語り部」という集まりが、地元のアイヌ語教室主催で行われていました。これは、古老に昔に経験した事や、ユカ(レニという拍子棒でリズムを取りながら、節をつけて語られる英雄叙事詩を聞くというものです。

伝統的なチセという茅葺きの建物で、囲炉裏を囲んで老若男女が集い、古老たちの話を聞く様子を見ながら、これはビデオで記録しないともったいない!と思いました。その時は、私がカメラを持参していたので、私が記録しましたが、私は平取町で暮らしていないので、撮り続ける事はできません。

そこで、アイヌ語教室の事務局長である萱野志朗さんに、私の思いを伝え、中古のビデオカメラがあるので差し上げたら使いますか?と聞いてみたのです。萱野さんは、1990年代に、自ら2本、短編を製作した経験もあり、ビデオの使い方を周知である事はわかっていましたので、安心して預ける事ができました。

この中古ビデオカメラは、私の旧友が送ってくれた物です。私は、2008年から2014年まで共同運営していたシネミンガの活動の一環として、使わなくなった中古カメラやパソコンを募り、機材が購入できない南米の先住民の人たちに渡していたのです。でも、日本のカメラは、日本語メニューしかないものが殆どだったので、使い方をどうしようかと思案していた所でした。

溝口尚美さんのビデオ寄贈の

北海道新聞(2015年7月2日)

今の目標は、撮り貯めた素材を編集する為に、どうにかして地元に置いておける機材を調達する事です。そして作った映像が、地元の人たちの宝として色々な形で活用されたらいいなと思っています。

最後に・・・。もしも、ご自宅や職場で、眠っているビデオカメラがあったら、是非ご一報ください。できれば、miniDVテープ式、もしくは、それ以降のSDカードなど新しい機材が嬉しいです。加えて、中古・新品のテープも、とても役立ちますので、もし処理にお困りのテープがありましたら、是非、寄付をお願いします。中古のテープは、私が責任を持って内容を消去し、アイヌ語教室に寄付します!

南米コロンビアのホセさんが、アイヌコミュニティを訪問

ホセ・メロ・チンガルさんは、南米コロンビアのマグイという地域で暮らすアワ民族です。
マグイは、アンデス山脈にあり、首都ボゴタからマグイまでは、数台のバスと徒歩で、数日かかります。

Colombia_magui Map

ホセさんの故郷は、20年以上に亘り、政府軍と反政府ゲリラの紛争に長年、巻き込まれています。中には、殺されたり、怪我をしたり、難民になった人たちも多くいます。

私がホセさんの事を知ったのは、写真家の柴田大輔さんを通してでした。柴田さんは2006年から南米コロンビアに通い、多様な風土に生きる先住民族を撮り続けていました。私もコロンビアで、ビデオを先住民族と共に製作する活動をしており、それがきっかけで、柴田さんと現地で会いました。

写真:© 柴田大輔

写真:© 柴田大輔

ホセさんの地域の事が、メディアで取り上げられる事は殆どありません。そして、ホセさんが地域の事を世界の人にも知らせたいと聞き、写真用のカメラを寄付し、ブログ作りを手伝いました。ブログはスペイン語だけでなく、英語版と日本語版も作りました。
この写真用のカメラは、私の学生時代の知人から寄付を受けた中古カメラで、これまでの企画でも、出来る限り、使わなくなったカメラを寄付してもらって、再利用してきました。

2015年5月、柴田さんは、ホセさんを日本に呼んで、スピーキングツアーするという企画を打ち立て、クラウドファンディングで資金を集め、実現させました。ツアーは、北海道・茨城・東京・愛知・京都・広島の学校や地域の様々な場所で行われ、柴田さんが写真を見せながら、ホセさんの話を翻訳し、質疑応答をするというスタイルでした。

北海道では、私が2008年から通っているアイヌ民族のコミュニティも訪問すると聞き、私もその日程に合わせて、北海道に行く事にしました。
ホセさんは、地元でアイヌ民族の伝統的な植物などの再生と継承に取り組むNPOの活動 に興味があり、同じような事を故郷でもしたいので、見学に訪れたのです。
地元の人たちとも交流し、ホセさんが持っていたバッグの素材や編み方が似ていて盛り上がったりして、とても楽しい一時でした。
その後、ホセさんは札幌の高校や大学で講演し、私はその様子をビデオに撮りました。
次に、柴田さんがマグイに行く時に、編集したDVDを持って行ってもらおうと思っています。

北海道新聞(2015年5月31日)

北海道新聞(2015年5月31日)

60才のホセさんは海外旅行が初めて。そして、文字通り、地球の裏側から徒歩・バス・飛行機を使って、東京に着き、その後も国内を移動しながら、休みなく講演が続いたというのに、疲れが見えず、それどころか、好奇心旺盛で笑顔を見せていました。彼の体力と精神力には、感服しました。

北海道学園大学にて

北海道学園大学にて